ネットショップを運営する上で避けては通れない、価格設定。
「単純に原価に対して利益を足していくだけでいいのか」
「みんなはどのように計算しているのか」
不安になりますよね。
本記事では、ネットショップを運営する上で一般的な値段の付け方をステップ形式で分かりやすく説明しています。
また、基本的な価格設定の方法はどのショップも取り入れているので、それだけではお客様は「安い」と感じてもらえません。
そこで今回は、購買心理を使って、購入していただいたお客様に満足してもらいやすい「値段設定のコツ(安く感じてもらえる演出方法)」をお話していきます。
初めて価格設定をおこなうという方も、今までは何となくで価格設定していた方も、この記事を読めば、自分のショップで取り入れたい「価格設定の方法」が見えてくるはず。
まずは基本的な内容から一緒にチェックしていきましょう。
※ここで提示している原価などの内容はあくまで、本記事における価格設定でのベースとなる考え方です。利益に関する詳しい区分で考える場合や、価格設定の方法の中でも原価を捉える内容が異なる場合もございますので、予めご了承ください。
価格設定で知っておきたい基礎知識
ここでは、価格設定をしていく上で把握しておきたい基本的な内容についてご説明していきます。
まずは、価格設定の基礎となる「原価」についてお伝えします。
「原価」とは、仕入れ価格だけじゃない
今回の記事でいう、「原価」というのは、単純に仕入れした商品の金額だけでなく、その商品を販売することでかかる費用(その商品の販売管理費)を足したものになります。
例えば、販売手数料のかかるモール等で販売をしている場合は、以下のような費用が考えられます。
販売管理費にはどんなものが含まれる?
- 手数料(決済手数料、サービス利用料金など)
- 梱包材費
- 広告費
- 人件費
など
原価にプラスにする部分は、お店によって足すものが異なってきます。
送料をお店側で一部負担する場合などは、その送料分も原価と捉え、価格設定の際に考慮しておきましょう。
売上に対する利益の割合を表す「利益率」
こちらも価格設定する上で重要な、「利益率」についてお伝えしていきます。
利益率とは、売上に対して利益がどれくらいの割合になるかを示す数字になります。
例えば、利益率30%というと以下のような考え方になります。
- 売上:1000円
- 利益:300円
また、利益率は次のような計算式でも求めることができます。
既にネットショップを運営している方は、上記の式に当てはめてみて自分のショップではどれくらいの利益率になっているのか、改めて数字で目にすることで、見えてくることもあると思うので、計算してみてください。
これで価格設定のベースについて押さえることができたので、次に価格設定の方法について、具体的にお話していきます。
ネットショップ(通販)での価格設定の方法
価格設定の大きな流れとしては、まず基本となる価格を決めてその後微調整をおこなっていきます。
【ステップ1】基本となる価格を設定する
これから微調整を行う際のベースとなる価格を決定するのに大切なステップです。
はじめに計算しておくことで、赤字になることのない販売価格を知ることができます。
ここでは一般的に使われている価格設定の方法について、いくつかご紹介していきます。
どの様な考え方から販売価格を決めていきたいかによって方法をご紹介しているので、あなたのショップに合った方法を取り入れてみてください。
「販売価格に対して利益を何割にするのか」から考える
まずは、価格に対して利益を何割とるのかという考え方で計算していきます。
基本的な計算式は以下の通り。
分かりやすくサンプルの計算式をご用意しました。
数字の部分をご自身のショップの内容に置き換えて計算してみてください。
(例)利益率を4割(40%)にしたいとき
販売価格=原価÷(1-利益率)
1,666円=1,000円÷(1-0.4)
「利益がいくら欲しいのか」から考える
こちらは、原価に対して確保したい利益を足す方法です。
計算式も単純で、以下のような形になります。
販売価格=原価+利益
冒頭でお話した通り原価に利益を足していく方法を取り入れていて、不安になっている方もいらっしゃると思いますが、あくまでこれから調整する前のベースとして計算するのには、一般的にも使用されている方法です。
※ここでの原価とは、仕入れ価格だけでなく、手数料や梱包材費などの費用も含まれています。
ここまでの方法で赤字にならない価格については確認ができたので、ここから調整していく方法についてお話していきたいと思います。
【ステップ2】お客様のニーズ(需要)に合った価格か調査する
ベースとなる価格が決まって次に考えなくてはいけないのが、その金額が「お客様に購入してもらえる価格なのか」ということです。
今までは販売者側の目線で考えてきましたが、ここではお客様(消費者)の立場になって考えていきます。
具体的には、「その商品に対して自分ならいくらまで払えるのか、購入したいと思うのか」
という視点で考えていきます。
もちろん個人で運営している方は自分で判断しても良いのですが、より色んな意見を反映させる場合は、以下のような方法が考えられます。
- 社内や身近な人の意見を集める
- アンケートで多数の意見を集める
- 商品モニターでリアルな意見を集める
- モール(楽天市場、Yahoo!ショッピング、Amazonなど)で売りたい商品の類似品のレビューを確認する
何名かで運営している場合は社内で意見を出し合ってもいいですし、オリジナル商品等の場合は客観的に考えることが難しいかもしれないので、実際に商品を手にとってもらえるモニターを募集したり、アンケートで回答を集められると、より様々な目線で客観視することが出来ると思います。
ちなみにアンケートを少ないコストで取りたい場合に活用できるサービスのひとつに、「クラウドワークス」というクラウドソーシングサービスがあります。
※クラウドソーシング…オンライン上で仕事の発注者と受注者をマッチングするサービス。
フリーランスの方が多く登録されているので集まる回答内容は多少偏るかもしれませんが、実は主婦の方も多く登録しているので、商品のターゲット層によっては主婦層に向けてアンケートを取るといったことも可能です。
また、モール(楽天市場、Yahoo!ショッピング、Amazonなど)内のレビューには使用感だけでなく、金額が高く感じたのかなども書かれていることがあるのでチェックしておきましょう。
「高かったけど、〇〇に価値を感じて購入した」というようなレビューは今後の商品開発などにも反映できることもあるので、市場調査は定期的におこなう必要があります。
そしてこの市場調査を行うのと同時に次のような視点でも見ていきます。
【ステップ3】競合と比較する
ここまでで、ある程度の価格が見えてきていると思いますが、ここでもう一つ注意しておきたいのが「競合」の存在です。
売りたい商品の類似品などを他のショップはどの程度の価格で販売しているのか、という視点で見ていきます。
検索エンジンや楽天市場、Yahoo!ショッピング、Amazon等のモールの検索機能を使って競合店の価格を調べます。
ここで注意したいのが安ければ安いほどいいのか?というところですが、過度に安くしてしまうのは危険です。
というのも、競合他社に比べて安すぎると何か裏があるのではないかと品質自体を疑われてしまう可能性があります。
あくまで競合と比較して同額にするか、付加価値をつけて多少高く販売することが現実的といえます。
付加価値をつけたい場合、以下のようなサービスを提供する方法があります。
- ノベルティのプレゼント
- 手書きのメッセージカード
- 無料ラッピング
- 値引きクーポン
- ショップデザインや商品写真のクオリティを上げる
など
ノベルティやクーポンなどはお客様に「このお店で購入して良かった」と思ってもらえるような印象を与える購入体験をお客様にしてもらうことが目的です。
最後のショップデザインや商品写真のクオリティを上げるという部分では、ショップの信頼度が上がるため、お客様も「このお店は少し高いけど安心して購入できるかもしれない」と思ってもらえます。
また上記のような施策を行うことで、満足度の高いレビューももらいやすくなるので、そのレビューを見た方からの信頼度も上がるというメリットもあるので、価格設定に関わらず、出来る範囲で積極的に取り入れていけると良いかもしれません。
ここまでは形式的に計算の方法などをご紹介してきましたが、もうちょっと工夫するだけでお客様に「買ってみようかな」と思ってもらえるような価格の演出方法についてお伝えしていきます。
値付け上手になる!心理テクニックも活用した価格設定のコツ
単純に計算しているだけだと、上手に値付けができているとは言えません。
心理学の方法などを使い、上手く価格を演出することでお客様にお得に買い物をしている気持ちになってもらうことも大切です。
ただし、ここで重要になってくるのが、過剰な演出はかえってお客様の不信感などを抱かせてしまう可能性があること。
あくまでもお客様の立場に立って、常識を超えない範囲での使用を心がけるようにしましょう。
その1:端数価格
価格を決める際に、「100円」などというキリの良い数字でなく、「98円」といった端数を使う方法です。
100円に比べて、実際は2円ほどしか変わっていないのにお客様に割安感をアピールすることができます。
その2:松竹梅の法則
「売りたい商品」を「売りたい価格」で販売したい場合に、価格を3段階にした商品を用意する方法です。
松竹梅の法則、または極端性回避の法則といわれています。
売りたい商品を「竹」として、その上の「松」、竹より価格の低い「梅」の価格の商品を用意します。
購入比率としては、「松(3):竹(5):梅(2)」程度になると言われています。
商品の価格を下げることなく、客単価を上げられるということで、良く使われている方法です。
また、3段階にランク付けをすることで、お客様は選択する際に選びやすく、またショップ側としても値段や内容の違いについて説明がしやすいというメリットもあります。
ここで注意したいのが、「松」の商品を用意するときに価格にふさわしい価値を提供するということです。
先程もお伝えしたとおり「一番内容の良いものにしよう」と松の商品を選ぶ方もいらっしゃるので、クレームにならないようにその期待に応えられるような商品を用意する必要があります。
その点においては、「竹」や「梅」に関してもいえることなので、内容以上の価格をつけないように注意しましょう。
その3:抱き合わせ(セット)価格
こちらはファーストフード店やスーパー、アパレルでいうと靴下や下着などでよく目にする方法ですが、抱き合わせ価格とは複数の商品をセットにして販売する方法です。
セットにした際は、単品で購入するよりも安い価格を設定し、お客様に割安感を与えて購入を促します。
一見、ショップ側が損をしてしまいそうですが、例えば予算が10,000円のお客様に洋服を買ってもらおうと思った時に、例えば以下のような価格の場合はどうなるでしょうか。
(例)
- ブラウス 5,000円
- スカート 7,000円
この場合、合計12,000円となり、予算をオーバーしているため購入してもらえないか、どちらかのみを購入するかもしれません。
けれど、この商品を「セットで10,000円」にした場合、商品の単価で計算すると損をしていますが、実質売上が0円だったものが10,000円の売上になります。
また、長い目で見ていくと、実際に購入してくれたお客様が、自分のショップの商品を気に入ってリピーターになってくれる可能性もあります。
その4:均一価格
「均一価格」とは、その言葉のとおり、価格の複雑な商品を均一の価格で販売する方法です。
安価で販売数あたりの利益率が低い商品でよく使われています。
100円均一のショップが主な例ですが、店頭に並んでいる商品は全て同じ原価ではなく、実際に得られる利益はバラバラです。
利益率が「低いもの」と「高いもの」をまとめて均一価格にすることで、以下のようなメリットが考えられます。
均一価格で得られるメリット
- 価格が分かりやすいのでお客様に安心感を与えられる
- 合理的な判断が難しい(商品自体の価値を判断しづらい)
- ショップ側での管理が楽
比較的安価な商品が多く、価格設定が複雑な場合は均一価格での販売を考えて見てもよいかもしれません。
その5:ロスリーダー価格
目玉となる商品については利益に関係なく安価な価格でお客様を呼び込み、関連商品を一緒に購入してもらう方法です。
目玉商品を単体で見た場合は赤字になってしまいますが、長期的・全体的に見ると黒字になっているという仕組みです。
スーパーなどで特売商品として良く使われている手法です。
その6:二重価格表示
こちらはセール時などによく使われています。
通常販売価格をあえて表記し、セール等の値引きした金額を並べることで、お客様がお得に購入できることをアピールする方法です。
この場合、お客様がどれくらいお得に購入出来るのかが明確なため、本来の価格以上の価値を提供することができます。
でも、ここで注意しておきたいのが「景品表示法」の存在。
二重価格を表示するためには、決められた期間通常価格で販売する必要があるなどの、条件をクリアにしなくてはいけません。
通常販売価格だけでなく、メーカー小売価格を表示する場合にも別の条件が提示されておりますので、「二重価格表示」を取り入れる際は、その点で注意が必要です。
参考記事:二重価格表示 | 消費者庁
まとめ
今回の記事で、「価格設定の方法」についてご紹介してきました。
- 一般的な計算方法を行い
- そこから調査などを深めていくことで適切な価格設定をおこなう
この繰り返しが基本になると思います。
冒頭でもお話しましたが、今回ご紹介したのはあくまでも一例です。
ショップで販売されている商品や、ターゲット層によっても方向性が変わってきます。
「これは実践が難しい」「こうした方がいいのかもしれない」そういったアイデアはぜひ積極的に取り入れて、より良い価格設定の方法を見出していってください。
ただ、この方法をベースに考えていただくだけでも、少し近道ができるのではないかなと思いますので、この記事がお役に立てると嬉しいです。
価格設定だけでなくお店全体の売上目標を立てたり、利益の出るボーダーラインを知りたいという方には「損益分岐点」という考え方がありますので、以下のページをご参考ください。